クレーマロウスクレヴァス

血で染まった東京土産がテーブルにあるばかりで、
どこまでもこの家は狭い。

妹が重傷で病院行きです。
行動範囲の広い、高校生の身空でギターを抱えて、
オーバーニーソックスを履いた足でどこまでも行く妹には、
この鎌倉という安全地帯はとても狭い。

ちょっとばかし運悪く巨大な犬に襲われた「ということになっている」。
それから妹は錯乱してるだけと片づけられる。平和だね。


母は何と思うんだろう。
また眉を曇らせて「忙しいから」というのかもしれない。

おもえば俺や妹の能力を知る世界が、
母を俺から遠ざけるように働いたのかもしれない。

母は長らく鎌倉に足を踏み入れないし、当分先になるだろう。
だいぶ良くなった弟とともに長野でそのまま暮らすって。

こうやってだんだん縁が切れていくんだなあとおもうとなんとも言えない気分だ。
できれば泣いてここにいてくれとでも言いたいけど、そんな年ですらないし、
そんな情熱も過ぎ去ってしまった・・・。